事件史

『地下鉄サリン事件から30年』後継組織アレフに参加する若者が増加

1995年3月20日、東京の地下鉄で神経ガス・サリンが撒かれ、13人が死亡、約5800人が被害を受けたあの忌まわしい「地下鉄サリン事件」から、2025年で30年が経過した。

事件から数十年が経った今も、被害者や関係者の中には後遺症や心の傷に苦しむ人が少なくない。

一方で、オウム真理教の後継団体とされる「アレフ」の動向については、現在も公安当局による監視が続けられているが、近年「アレフ」が若者たちを引き込み、再び勢力を拡大している。

公安調査庁の報告によれば、2023年までの10年間で新たに860人以上が入信し、その過半数は事件後に生まれた20代以下の若年層であるという。現在、アレフの信者数は1600人を超え、そのうち約1200人が主流派のアレフに所属しているとされている。

こうした状況は、オウム事件を直接知らない若い世代が、団体の思想や活動に影響を受けている実態を示しており、今後も社会全体で注視していく必要があるだろう。

世界初の化学兵器テロの場となった東京

画像 : 事件発生時の築地駅前 wiki © 警視庁

アレフの勧誘手口としては、団体名を伏せ、ヨガ教室や自己啓発セミナーを装って街頭で声をかけ、興味を持った若者を勉強会などに誘い込む手法が取られているという。

特にコロナ禍や経済不安などで、精神的に不安定な若者がターゲットになりやすいとの指摘もある。

公安当局は「今もなお危険性は消えていない」と警鐘を鳴らすが、その声はどれだけ届いているのだろうか。

2023年には、アレフに対する初の再発防止処分が発効し、全国13施設での活動が6カ月間制限された。しかし、これは一時的な措置に過ぎない。
制限が解ければ、再び地下で蠢き始める可能性は極めて高い。

1995年に発生した地下鉄サリン事件では、化学兵器が公共交通機関で使用され、多くの命が奪われた。

現在も公共の場での警備や監視は強化されているが、無差別な攻撃に完全な備えは難しい。過去の悲劇を繰り返さないためにも、団体の動向に対する関心と適切な情報共有が求められている。

第2の地下鉄サリン事件を防ぐために

画像 : オウム真理教 麻原彰晃 public domain

オウム真理教がかつて開発・保有していたのは、サリンにとどまらない。
VXガスや炭疽菌など、致死性の高い化学・生物兵器の製造にも手を伸ばしていたことが、事件後の捜査で明らかとなっている。

その技術的知見が、後継団体「アレフ」にどの程度継承されているかは不明である。
しかし、公安調査庁は組織の潜在的危険性を重く見ており、2025年には5度目となる再発防止処分を決定した。団体の活動施設への使用制限や、金品授受の禁止などの措置が講じられているが、それでも警戒を緩めることはできないだろう。

地下鉄サリン事件は終わった出来事ではなく、いまも続く現実の延長線上にある。

社会の中に再び同様の危機が生じることがないよう、過去の教訓を忘れずに向き合い続ける姿勢が問われているのかもしれない。

参考 : 『「Aleph(アレフ)」を対象とする再発防止処分の決定について(令和7年3月10日決定)』公安調査庁
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

アバター

エックスレバン

投稿者の記事一覧

国際社会の現在や歴史について研究し、現地に赴くなどして政治や経済、文化などを調査する。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. イスラム教における来世と「ジハード」の本来の意味
  2. 【38人見ていたのに誰も助けなかった】 キティ・ジェノヴィーズ事…
  3. 通行料4万円! 波崎シーサイド道路に誕生した「平成の関所」とは?…
  4. 円空とはいかなる人物か「生涯仏を彫り続けた僧」
  5. BOØWY(氷室京介)のモノマネは結局誰が一番似てるのか?
  6. 「ポンジ・スキーム」あなたは見抜ける?人々の欲望につけ込む古典的…
  7. 「死の魔術」が行われていた冥界への入口がエルサレムの洞窟で発見さ…
  8. 『最強の縁切り神社』京都・安井金比羅宮の「縁切り碑」とは

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

軍事評論家リデル・ハートの【大戦略・間接的アプローチ】

グデーリアンに影響を与えたリデル・ハート「大戦略」はイギリス人の軍事評論家としてその名を…

『三国時代のナルシスト』 何晏が作り出した危険な快楽 「五石散」とは

薬物薬物は古今東西を問わず、多くの人々の人生に深刻な影響を及ぼしてきた。日本でも毎年、薬物の…

百人一首の謎について調べてみた

お正月のかるた遊びでお馴染みの「百人一首」。だが、そこには様々な疑問や謎が秘められているよう…

【去勢された歌手たち】 カストラートとは 〜教皇も狂わせた美声の光と影

人はこの世のものとは思えないほどの美しさに触れると、「この美しさを永遠にとどめて欲しい」と願…

いつまでも出てこない【漫画~キヒロの青春】85

お久しぶりです♪本日よりまた再開させていただきます!また良かったらちょくちょく覗きに…

アーカイブ

PAGE TOP